『スペイン史を彩る豊かな個性』
本書は、中公新書の好シリーズ「物語各国史」の一冊ですが、「人物篇」と銘打たれているとおり、いわば番外編的な位置付けのようです。
すなわち本書は、中世の伝説的英雄エル・シドやドン・キホーテの作者セルバンテス、「裸のマハ」で有名な画家ゴヤなど、スペイン史上のスーパースターたち6名を登場させ、時代を追いつつ、彼らにまつわるエピソードなどを紹介していくという趣向です。
ここで注意を要するのは、本書は、彼ら6人の生涯などを通してスペインという国の歩みを解説する、という内容にはなっておらず、話の中心はあくまでも彼ら自身だということです。したがって、スペイン史の入門書のようなものを期待して読むと、肩すかしを喰らうことになりかねません。
本書は寧ろ、スペインという国が如何に豊かな個性に彩られているか、ということを語りかけています。歴史学とか政治史とか難しいことではなく、スペインという国と民族に関する軽い読み物として、楽しく読むのが良いように思います。